鞆の浦　　広島県福山市

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　丘に上がると、遠く雲の彼方に四国の山々が見え、眼下に鞆の浦が一望できる。
　湾のまっただ中に橋を架ける計画が出された。絵で大小の舟が停泊している辺りも埋立てる。「この歴史的な景観は全国民のもの」と、埋立て架橋計画撤回を求め反対運動が起こった。結局、二〇一二年六月、県知事が橋を架ける計画を撤回。景観が保たれることになった。
　七三〇年、大伴旅人は九州から京への帰途九州で亡くした妻を偲んで
　「我妹子が見し鞆の浦の天木香樹は常世にあれど見し人ぞなき」（万葉集）と歌った。
「いとしい妻が往きに見た鞆の浦のむろの木は、変わらずにあるが、これを見た人はもうこの世にいない」と。